ACHIEVEMENTS
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ACHIEVEMENTS研究成果
ACHIEVEMENTS
プレスリリース
2023.12.22
・哺乳類の生殖細胞において、組換えタンパク質がDNA組換えの起こる場所にのみ結合する仕組みを解明
・タンパク質のDNA結合を安定化する仕組みではなく、不安定化する仕組みに着目することで新たな仕組みが明らかに
・生殖補助医療や不妊治療への応用に期待
大阪大学蛋白質研究所の伊藤将助教、藤田侑里香特任研究員(常勤)、古郡麻子准教授、篠原彰教授、近畿大学農学部の松嵜健一郎講師、国立遺伝学研究所先端ゲノミクス推進センターの豊田敦特任教授らの研究グループは、DNA組換えが活発に起こる哺乳類の生殖細胞※1において、DNA組換えに必要なタンパク質がDNA上の無関係な場所に結合することを防ぐ仕組みを新たに明らかにしました。
私達は、生殖器官内の生殖細胞において、父親と母親から受け継いだDNAを組換えによりシャッフルすることで、新たな遺伝情報を持つ精子や卵子を獲得します。DNA組換えの鍵を握るRAD51タンパク質は、DNAに結合することでDNA組換えをスタートさせます。これまで、RAD51タンパク質がどのように組換えが起こる場所のみを狙ってDNAに結合できるのかについては解明されていませんでした。
今回、伊藤将助教らの研究グループは、マウスをモデルとして用いることで、哺乳類の生殖細胞が、組換えが起こらない場所に結合したRAD51タンパク質を積極的に外すことで、組換えが起こる場所のみにRAD51タンパク質を結合させる仕組みを明らかにしました。この仕組みが破綻すると、DNA組換えがうまく行かなくなり、結果的に精子ができなくなります。本研究成果は、哺乳類が精子や卵子を安定的に産生する仕組みや、生命が多様性を生み出す仕組みの理解に繋がり、将来的には生殖補助医療や不妊治療への発展が期待されます。
本研究成果は、米国科学誌「Nature Communications」に、10月27日23時(日本時間)にオンライン掲載されました。
タイトル:“FIGNL1 AAA+ ATPase remodels RAD51 and DMC1 filaments in pre-meiotic DNA replication and meiotic recombination”
著者名:Masaru Ito(伊藤将)1*, Asako Furukohri(古郡麻子)1, Kenichiro Matsuzaki(松嵜健一郎)2 , Yurika Fujita(藤田侑里香)1, Atsushi Toyoda(豊田敦)3, and Akira Shinohara(篠原彰)1*(*共同責任著者)
著者所属: 1大阪大学蛋白質研究所、2近畿大学農学部生物機能科学科、3国立遺伝学研究所先端ゲノミクス推進センター
URL: https://www.nature.com/articles/s41467-023-42576-w
※1 生殖細胞: 生殖器官に存在する、精子や卵子の産生に必要な細胞の総称。
タンパク質が特定の場所に結合して機能できる仕組みが、実は無関係の場所への結合を取り除くことで成り立っているという、新たな発見をすることができました。「DNA組換え」と聞くと「遺伝子組換え食品」を思い浮かべる方が多いと思いますが、DNA組換えは不妊症やダウン症、がんなどと密接な関連があります。将来の医療応用に繋がるような、基礎的発見を積み重ねていきたいと思います。
大阪大学蛋白質研究所 ゲノム-染色体機能研究室
http://www.protein.osaka-u.ac.jp/genome/
大阪大学蛋白質研究所
助教 伊藤将(いとうまさる)、教授 篠原彰(しのはらあきら)
TEL:06-6879-8624 FAX: 06-6879-8626
E-mail: msrito2[at]protein.osaka-u.ac.jp、ashino[at]protein.osaka-u.ac.jp
([at]を@に置き換えてください。)