ACHIEVEMENTS
ACHIEVEMENTS研究成果
ACHIEVEMENTS
プレスリリース
2024.05.10
◆細胞内局所における自発的な発熱が、神経細胞が分化する際の突起伸長の駆動力として働くことを発見しました。
◆これまで、神経分化を担う機構は分子で理解されてきた中で、その機構の一端が物理因子である熱であることを初めて解明しました。
◆細胞内で自ら産生する熱が生体機能の担い手として、幅広く生命現象の解明や医工学応用につながることが期待されます。
東京大学大学院薬学系研究科の岡部弘基助教と、大阪大学蛋白質研究所の中馬俊祐大学院生(博士課程)(研究当時)、同研究所の原田慶恵教授らによる研究グループは、神経細胞内の自発的な発熱が神経分化における形態変化を駆動していることを世界で初めて発見しました。神経発達と再生における重要なプロセスである神経分化のメカニズムについては、それを担う様々な遺伝子の働きが精力的に解明されてきた中で、細胞内の温度変化がどのように関与するかについては全く不明でした。本研究では、独自の単一生細胞内の温度イメージング法(注1)を活用することで、細胞内の局所的な温度を操作・観察する方法を開発し、神経モデル細胞やマウス脳由来の神経細胞における細胞内で自ら生じる温度上昇が神経突起伸長(注2)のトリガーとして機能することを発見しました。この研究成果から、細胞内の熱が神経分化の理解や医学応用を担う重要な因子として新しい切り口をもたらすと期待されます。
本研究成果は、英国科学誌「Nature Communications」に2024年5月9日(木)午後6時(日本時間)に公開されました。
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(注1)細胞内温度イメージング法
生きた単一細胞内に蛍光性温度計を導入し蛍光顕微鏡で観察することにより細胞内の温度変化や温度分布を観察する方法です。
(注2)神経突起伸長
神経細胞の細胞体からの突起を指します。これは神経細胞間の電気信号の伝達など、神経機能にとって重要な構造です。
雑誌名:Nature Communications
題 名:Implication of thermal signaling in neuronal differentiation revealed by manipulation and measurement of intracellular temperature
著者名:Shunsuke Chuma, Kazuyuki Kiyosue, Taishu Akiyama, Masaki Kinoshita, Yukiho Shimazaki, Seiichi Uchiyama, Shingo Sotoma, Kohki Okabe*, Yoshie Harada*(*共同責任著者)
DOI: 10.1038/s41467-024-47542-8
URL: https://www.nature.com/articles/s41467-024-47542-8
蛋白質ナノ科学研究室(原田慶恵研究室)
http://www.protein.osaka-u.ac.jp/nanobiology/